アートの価格は、材料費や制作時間で決まるものではない。
たとえば、キャンバスと絵の具を使った作品でも、無名の作家のものなら数万円、著名な作家のものなら数億円になることがある。その違いは何なのか。
アートの価格は「誰が作ったのか」、つまり作家のブランドによって大きく左右される。
そして、それに加えて市場の需要、美術界での評価、作品の希少性、流通の仕組みなど、さまざまな要素が関係している。
アートの価格は「誰が作ったか」で決まる
アートの世界では、「作品の良し悪し」だけでなく、「誰が作ったのか」が価格を決める最も重要な要素のひとつである。
たとえば、同じような技法で描かれた絵でも、ピカソの作品は数十億円、無名の作家の作品は数万円で取引されることがある。これは、ピカソが美術史に名を刻む作家であり、その作品を求めるコレクターが世界中にいるからだ。
作家の知名度や評価が上がるほど、作品の価格も上がる。アートの価格は、ファッションブランドのように「ブランド価値」が大きく影響するのだ。
作品の希少性が価値を生む
アート作品の多くは一点ものとして制作される。これは市場に出回る数が限られることを意味し、価格の上昇につながる。
また、版画や写真のように複数制作される作品でも、エディション(限定数)が決められている。10枚しかない作品と、1,000枚作られた作品では、前者のほうが希少性が高いため、価格も上がりやすい。
市場に出る数が少なく、求める人が多いほど、作品の価値は高くなる。これは、限られたものに価値が生まれるというアート市場の基本的な仕組みである。
ファンの数が価格を左右する
アートの価格は、作家の人気だけでなく、その人気を支えるファンの数にも影響を受ける。
たとえば、ある作家のファンが100人しかいない場合、その中に資産10億円以上の人がいるかどうかは分からない。
しかし、ファンが10万人いれば、その中に資産10億円以上のコレクターが複数いる可能性が高くなる。
ファンが多い作家の作品は、市場で求める人が多く、価格が安定しやすい。奈良美智や村上隆の作品が高値で取引されるのも、世界中に多くのファンやコレクターがいるためである。
美術界の評価が価格を決める
アート作品の価値は、市場の需要だけで決まるわけではない。評論家や美術館、オークションの落札価格、著名コレクターの存在など、さまざまな要因が影響を与える。
評論家の批評:美術評論家が「この作家は重要な存在である」と評価すると、作品の価値が上がる。
美術館の収蔵歴:著名な美術館に収蔵された作品は、美術史的な価値が認められたことになり、価格が上昇しやすい。
受賞歴:国際的な美術賞を受賞した作家は、市場での評価が高まり、作品の価格も安定する。
オークションの落札額:過去に高額落札された作家の作品は、その後も高値で取引されることが多い。
著名コレクターの所有:ロックフェラー家やピノー財団などの著名コレクターが作品を購入すると、その作家の市場価値が上がる。
こうした評価の積み重ねが、作家のブランドを形成し、作品の価格を押し上げる要因となる。
価格はギャラリーとアーティストが相談して決める
アートの価格は、市場の動向だけで決まるのではなく、ギャラリーとアーティストが相談しながら決めていく。
初期の価格設定:作家がキャリアをスタートしたばかりの頃は、比較的低い価格から始まり、徐々に値上げしていく。
ギャラリーの役割:ギャラリーは作家のキャリアを管理し、需要を見ながら適切な価格を設定する。
オークションの影響:ギャラリーが設定した価格よりもオークションでの落札額が高い場合、次回以降の作品価格は引き上げられることが多い。
ギャラリーは市場のバランスを見極め、作家の作品が適切な価格で取引されるよう調整する役割を果たしている。
アートの価格は多くの要素で決まる
これまでのことをまとめると、アートの価格は、以下の要素によって決まる。
作家のブランド力:知名度や市場での評価が高い作家の作品ほど、価格が上がる。
希少性:一点ものや限定エディションの作品は、価格が上がりやすい。
ファンの数:ファンが多い作家ほど、価格が安定しやすくなる。
美術界の評価:評論家、美術館、受賞歴、オークション結果、著名コレクターの購入が価格を押し上げる。
ギャラリーの戦略:ギャラリーが価格を管理し、作家の価値を維持する。
アートの価格は単純なものではなく、作家のブランド力、市場での需要、美術界の評価、流通の仕組みなどが複雑に絡み合って決まるものである。
そのため、アートの価格を理解するには、作品そのものだけでなく、作家の市場価値や美術界での評価を知ることが重要となる。
コラム著者のX(Twitter)はこちら
https://newspicks.com/topics/contemporary-art/
2025年2月21日(金) ~ 3月11日(火)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日2月21日(金)は17:00オープンとなります。
※オープニングレセプション:2月21日(金)18:00-20:00
入場無料・予約不要
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F
tagboatのギャラリーにて、現代アーティスト手島領、南村杞憂、フルフォード素馨による3人展「Plastics」を開催いたします。「Plastics」では、表面的な印象や偽りの中に潜む本質を提示した3名のアーティストによる作品を展示いたします。